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【大学院生インタビュー#2】文系大学院生が語る、就活以外の進路とは…研究内容から進路選択について深掘り!

文系学部生の大半は、3年生にもなれば「就活」を意識し始めるでしょう。しかし、進路選択肢はそれだけではありません。文部科学省によると近年の文系大学院への進学率は、実は緩やかな増加傾向にあると示されています。

そこで、今回は大学院生インタビュー第2弾として、慶應学部生から横浜国立大学大学院に進学された修士課程の院生の方に、大学院での生活のリアルから入試、就活について語っていただきました。


横浜国立大学大学院都市イノベーション学府修士課程2年 米田すずらんさん

 

大学院進学のきっかけ

 

ご経歴と専攻に興味を持たれたきっかけを教えてください。

学部は法学部政治学科で、高校時代から「先住民の人権」に関心があり、様々な社会課題の根底にある問題を学ぶことを目的に政治学科に入学しました。

具体的に院進を決断した経緯について教えてください。

学部時代での学習や、人生経験を通して考えたことが2つあります。ひとつは、当初は国際協力を「先進国が外から助ける一方向の支援」と捉えていましたが、授業での学びや、社会貢献活動へ参加した経験から、非支援者とされていた方々のパワフルさを実感し、支援者/非支援者という二項対立を超えた先住民の当事者性を軸に対等な協働として組み立て直す必要に気づきました。第二に、研究は机上で完結せず、現地の人々との関係づくりと往復の中で問いが立ち上がると体感したことです。

こうした気づきを理論面から支えるため、まずは正義や権利の基礎概念を学ぶべく、政治思想のゼミを選びました。徐々に、アボリジナル・アートやストリートアートと人権の接点に興味が移り、学部での学びでは一定の知見が得られた一方、当初やりたかったアボリジニ研究そのものは叶いませんでしたが、並行してフェアトレードのインターンなどを通して社会課題にも関わる経験をしました。その過程で資本主義のあり方への疑問が積もり、このモヤモヤを抱えたまま社会に出たくないと考えるようになりました。私の場合、大学入学時から親に「大学院も選択肢に入れていい」と言われていたこともあり、大学院への進学を3年次には決めていました。また幼少期にオーストラリアに住んでいたとき、父が現地の人たちと学びを楽しむ姿に感銘を受けた経験を語ってくれたのも後押しでした。「学ぶことを楽しめる環境にもう一度身を置いてほしい」と言っていたのが印象的です。

なるほど。人生経験から得た知見や学部時代の学習が大きく院進の動機につながっているのですね。

 

 

専攻する「開発人類学」とは?

では、開発人類学とはどのような学問ですか?

開発学(政策立案・社会の改善)と人類学(人びとの生活世界の理解)を組み合わせ、トップダウンからの開発だけでなく、現地の声を踏まえて進めるボトムアップ的な観点からも社会課題を捉える学問です。例えばインフラ整備ひとつでも、生活に与える影響を直接生活者から丁寧に聞き取り、設計に反映します。そのような性質からもフィールドワークが盛んで、自分の足腰を使い現地に赴いて研究してゆくという点ではとてもダイナミックな学問であるとも言えます。

学部時代での学びが活きたと思う点は何ですか?

学部政治学科の掲げる「ジェネラリストを育成する」という目的に基づいたカリキュラムが、私にとても合っていました。政治思想を主軸に知識を構築しつつ、ラテンアメリカ研究やアメリカ司法など非常にニッチな授業も多く用意されており、柔軟に物事を捉えられるようになりました。さらに、他学部の授業も履修できる制度があり、政治学科で関心を持ったテーマをより専門的に学びたいと思った際には、文学部の授業も受講しました。その中で、人類学的な発想に強く惹かれている自分に気づくことができました。

 

学部時代の単位について

学部時代はどのように単位を取っていましたか?

学芸員資格も取得しました。授業を履修すれば取れる資格なので、美術など芸術好きは挑戦しやすいと思います。結果として単位はだいぶ多く、学部4年間で200単位を越えたと思います。 教員免許取得のプロセスと少し似通っているのではないでしょうか。

 

外部受験の経緯:学びたいことを貫く

横浜国立大学に進学されているとのことですが、外部進学の決め手はなんでしょうか?

慶應の学部時代に価値観を変えてくれた先生がいらっしゃいました。その先生は、1年生の担任であり、ラテンアメリカ研究の先生で、フィールドワークを重ねながら、常に「研究は楽しむものだよ」とおっしゃっていて、その姿勢に影響を受けました。授業を通して、先住民の方々のパワフルさや熱い心、行動力に触れたのも印象的でした。自分が好きなことをもっと追いかけていいんだ、と研究への向き合い方を前向きに変えてくださった先生です。その方と親しい先生が横浜国立大学に在籍しておられ、その先生の元へ直接お伺いし、相談に行ったところ「やりたいことができる」と確信できました。学部ゼミの先生からも「うちでは専門的に扱いにくいから、やりたい研究をできる場所に行きなさい」と背中を押され、環境ではなく指導教員で選びました。

 

院試について:必要なGPAは?入試スタイルは?

院試はどのように準備していましたか?

3年冬~4年春が出願準備期間でした。研究計画書はゼミの先生に何度も見てもらい、関連論文を読み込んでブラッシュアップし続けました。方式はGPA基準+研究計画+面接というイメージで、GPA3.5程度が目安だった記憶があります。学問分野や大学ごとに入試・研究の作法は違います。オープンキャンパスや個別相談で相性を確かめてください。

塚田綸太郎さん(慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程2年):私の専攻(文学/哲学系)では、古典から現代まで300ページ級の文献を精読し、要点を自筆で再構成する訓練を徹底しました。入試のスタイルは大学・専攻で全く違いますのでそこに注意が必要ですね。

 

右:慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程2年 塚田綸太郎さん

 

院進後の生活について:就活との両立は?

進学後の過ごし方を教えてください。

M1(大学院1年生)の前半は就活もあり思うように研究時間が取れませんでしたが、その年明けから基礎固めに集中し、2月中旬〜3月中旬の約3週間オーストラリアでフィールドワークしました。そこで核心的な問いが立ち、今はその軸をもとに研究を続けています。M2では研究にフルコミットする予定です。

就活の話題が出ましたが、就活と研究の両立はどうでしたか?

就活の「フレームワーク思考」と研究の「一次資料から組み立てる思考」は質が違い、同時進行は相性が悪いと感じました。期間を区切って集中するのが現実的でした。就活の面接では、本からの学びを軽視する面接官に当たって議論になったこともあります。価値観が合わない組織が見えるという意味では、それも収穫でした。ただ、院生であるがゆえに「研究テーマは何?」と深掘りされやすく、固まっていない段階だと不利に映ることもあります。ですがグループディスカッションやケース面接では、研究で鍛えられた論理構成力が活きました。結果コンサルの業種に就職します。

コンサル分野に進むとのことですが、その就職先の選択はどのようにしましたか?

フェアトレードや子どもの居場所づくり、環境プログラムなどの活動経験から、サステナビリティに関わる「ルールメイキング」に携わりたいと思い、公共系プロジェクトに関われる可能性が高いコンサルを選びました。アボリジナル・アートそのものを職業にするのは難しいのですが、将来的には関わっていきたいと考えています。

現在は修士課程ですが、博士過程に進学するつもりはありますか?

将来的に博士課程には関心がありますが、まずは社会を知ること、そして資金面の現実から、一度就業してから考える選択を取りました。なのでストレートで博士に進む人には尊敬の念を抱いてます。

2つの大学での生活を経験したSさんから見て、慶應と横国のちがいは何だと思いますか?

どちらも多様ですが、慶應は「やりたいことが強い人」が特に多く、考えをぶつけ合える環境で鍛えられました。横国では熱量の高い先生も多く、各授業が濃密だったのが印象的です。

 

最後に

最後に、学部生へのメッセージはありますか?

大学の内部でも外部でも、結局は「自分が学びたいことに忠実でいられる環境」を選ぶことが大切です。理系と比べて、文系は院進するという選択肢が少ないと感じます。若いうちの4年間もしくはそれ以上の学生時代を、好きなことに思い切り使っていいと思います。資格やインターンなど寄り道に見える経験も、後から研究や仕事に結びつきます。恐れず何事にも挑戦してみて欲しいと思います。私も最近、来年の就職を見据えたインパクト投資系のインターンを始めました。院生は忙しいですが、学ぶ立場だからこそ挑戦しやすい面もあります。年齢もバックグラウンドもさまざまな仲間がいます。