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ABEMAでも話題の「海外ではたらく私たち20’s」ポッドキャスト番組。バイアスを超えたキャリア可能性を

国内外で活躍する慶應義塾大学OG・OB(三田会)のキャリアストーリーや視点をインタビュー形式で紹介し、現役生に向けて発信する取材企画 ”focus.”

#05:田岡栞菜さん
2024年、慶應義塾大学総合政策学部卒。
大学卒業後は大手コンサルティングファームに就職し、M&A領域のアドバイザー業務を中心に担う。その傍らで、ポッドキャスト『海外ではたらく私たち20’s』を運営し、代表として番組制作から発信に携わっている。海外で挑戦する20代の日本人女性をゲストに招き、日本社会の固定観念を覆し続ける女性たちと、海外で働くまでのストーリーや現地でのリアルな体験談、将来のキャリアについてトークを展開。Apple Podcastのビジネス部門では第3位にランクイン、ABEMAニュースにも取り上げられるなど、キャリアに悩む若者世代に反響を呼んでいる。

大学卒業2ヶ月前に始めたポッドキャスト活動。発信を始めたきっかけとは?

━━「海外ではたらく私たち20’s」というポッドキャスト活動を始めたきっかけを教えてください。

大学卒業を目前に控えた4年生の1月頃、大学生活を振り返った時に「高校時代までの固定観念が覆され続ける4年間だったな」というのが1番の感想でした。

慶應義塾大学の特にSFC(湘南藤沢キャンパス)には、起業している人が何人もいたり、留学や休学も当たり前の選択肢として存在していました。

私は北海道石狩市出身、1学年約70人の中高一貫校で育ちましたが、当時のコミュニティは非常に狭かったので進路の選択肢も限られており、ロールモデルもいませんでした。高校時代までの環境と大学4年間の環境を比較した時に、私はたまたまSFCに入学できたことが大きな転機となり、様々な人と出会い彼らの存在を知ることができました。でも、もしSFCに進学しなければ彼らの多様な選択を知ることはなかったなと思って。

次第に「SFCに存在する多様な選択肢を、コミュニティの垣根を越えて多くの人に知ってもらいたい」と考えるようになったんです。私自身、彼らとの出会いで自分の固定観念を覆す選択肢を持つことができたし、そのような出会いを北海道で過ごす中高時代から求めていたからです。

最初は、大学の先輩やSFCの友人たちを紹介することから始めようと思い、ポッドキャストを立ち上げることにしました。最初のエピソードを投稿したのは、卒業の2ヶ月前。当初は個人プロジェクトとして撮影や編集など全てを1人で担当していたのですが、音声の編集経験はなく、ポッドキャストの作り方も全く分からなかったので自分で調べるところから始めました。これが私のポッドキャスト活動の始まりですね。

「自分の固定観念を取り払う」ポッドキャスト制作にかける思い

━━なぜ、番組ゲストを海外で働く20代にフォーカスしているのですか?

最初のゲストの方々を見ていただくと分かるように、実は最初は海外で働く人を意識していたわけではありませんでした。ゲストの共通点は「私の友達」ということだけで。でもこれだと、視聴者にとって、どのような番組なのかが分かりにくいですよね。

そこで、4人目のゲストを探す際、このポッドキャストのコンセプトに立ち返ることにしました。キャリアや海外で働くことなど様々な軸が考えられましたが、「周囲に固定観念を覆すロールモデルがいないことで、選択肢が狭まり可能性が制限されている」この現状を解決したい気持ちが一番だなと思って。

例えば、H&Mに就職した友人がいるのですが、私は勝手にH&M Japanに就職したと思い込んでいたんです。でも実際に聞くと、就職先は本社のスウェーデン。「その選択肢があったのか」という驚きと同時に、自分自身の「日本人の若い女性が海外就職はできない」と思い込んでいた無意識の固定観念にショックを受けたんです。自分の周りに海外就職をしたロールモデルがいなかったことで、そのような選択肢を持つことさえできていなかったのだと気付きました。

実際に、ロールモデルを見つけることの難しさでいうと、当然、海外で働く人は日本に住んでいないので、見聞きすることも少なく出会いの機会は限られますよね。実体験や当事者意識も踏まえて、海外で働く若い女性を軸にすることで広い選択肢を提示できるのではと思い、現在の「海外ではたらく私たち20’s」というコンセプトに至りました。

━━運営元の名前は「BIAS」ということですが、これにはどういった由来がありますか?

私自身がアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)によって自分の選択肢を狭め、可能性を制限していたことが背景にあります。ロールモデルがいれば新たな選択肢が見えてくるかもしれませんが、自分の固定観念や「自分が海外で働くなんて無理」といった思い込みが、可能性を狭めている要因の一つだと思うんです。でも、思い込みって無意識なので自分で認識することが難しいんですよね。

そうしたバイアスや固定観念が認識され、解消に繋がることを目指すプロジェクトとして「BIAS」という言葉を使っています。新たな選択肢との出会いを通じてバイアスを乗り越えることができれば、多くの人々に新しい可能性を見出せるのではないか。このような突破口を示す言葉としての「BIAS」です。

コンサルティング業務と番組制作の両立…その多忙な舞台裏とは?

━━番組制作から発信までの全てを1人で行っている田岡さん。会社員とポッドキャスト活動の両立に関して、難しい面も多いのではないでしょうか?

会社員としての仕事とポッドキャスト活動を両立させることは、確かに難しい面があります。平日に自分の時間を作り出すことに苦労したり、休日に活動することも多くなります。でも、私の活動目的はお金を稼ぎたいとか名声を得たいというところではなく、明確なビジョンを掲げてそれを達成したいというところにあるので、モチベーションも保てているのだと思います。

私の性格も影響しているかもしれませんが、目標を掲げて頑張ることはあまり苦ではなくて。ポッドキャストを通じて多くの人と出会えることや、本業では得られない新しい機会に恵まれることは、非常に楽しく有意義です。もちろん、ポッドキャスト活動が本業にプラスになることもあるので、今は両立できていますね。

━━実際、番組を始めてから、その反響を感じる場面も多いのではないでしょうか?

番組がApple Podcastのビジネス部門で3位にランクインしたこともあり、その反響を実感しています。

最初は、固定観念を覆してくれる友人との会話が1人にでも届いたらいいなという気持ちでしたが、想像以上に多くの方が番組や活動の背景に興味を持ってくださり、取材をしていただく機会にも恵まれました。また、一緒にこの活動をしたいと声を上げてくださる方も多く、同じような課題感を持っている人がいることを再認識しました。

視聴者の方には、気楽にトークを楽しんでもらう中で、「こんな選択肢もあるんだ」と固定観念を覆すきっかけにして頂けると嬉しいです。また、12月には過去にゲストとして出演してくださった方が集うオンライン交流会を企画し、計10カ国から参加者が集まるイベントを開催しました。世界中で活躍するパワフルな女性が一堂に会し、私自身もエンパワーされた素敵な時間でした。今後はリスナーの方などにも参加していただける場を作る予定なので、ぜひその場を活用してほしいです。

情報過多の時代、なぜ私たちはそれでも岐路に迷うのか?

━━現代は情報であふれているにもかかわらず、なぜ人生選択に関する課題が生まれてしまうのでしょうか?

インターネット上には二次情報が溢れていますが、人生選択に大きな影響を与える一次情報の取得は自分が属する地域やコミュニティに依存するからだと考えています。

例えば、私の母校には北海道大学出身の教師や医学部に進学する上級生が多くいたため、殆どの同級生が北大や医学部への進学を希望していました。私自身、塾生や塾員に出会う機会は全くなかったので、慶應に進学することなど想像もしていませんでした。ロールモデルを介した一次情報の有無が選択肢の広がりに大きく影響しているからです。

実際に私がSFC(湘南藤沢キャンパス)の存在を知ったのは、偶然参加したプログラミングスクールの講師がSFC生だったからです。その出会いがなければ慶應を目指すことはなかったと思います。ただ、志望校をSFCに決めた後は大変でしたね。周囲にはロールモデルとなるSFC生がおらず、AO入試のための塾も北海道にはありませんでした。そのため、長期休暇は東京に行って一次情報を集めることに多くの時間を費やし、塾に通わず独学で入試対策に取り組みました。

このような進路選択やキャリア選択の際に生じる情報の偏りは、個人の選択肢を狭め可能性を制限する一因になっています。また、個人の機会損失だけでなく、組織や社会の機会・経済損失にも結びついているはずです。この課題を解決するために、従来は特定のコミュニティ内で留められていた情報をポッドキャストなどのメディアを通じて世界中の人々に届けることで、少しでも情報格差の解消ができればと思っています。

とはいえ、これらの活動も私を介した二次情報としての発信であることに変わりないため、将来的にはロールモデルを「知る」を超えて「繋がる」機会を提供していきたいです。進路やキャリアの設計においては正解が存在しないからこそ、個人にとってベストな選択肢を考える必要があります。特に、現代のような多様性の時代には1人の特定のロールモデルを見つけることの方が困難なはず。そのため、複数のロールモデルになり得る人から取り入れたい要素を見出し、オリジナルのロールモデルを創造することが近道になると考えています。

そのためには、確立された方法論だけではなく、実際に人と出会い、対話を通じて自分の状況に応じた解決策を見つける必要がありますよね。現時点ではそれに対するアプローチが十分にできていないので、今後はイベントやコミュニティの運営にも取り組み、国境を超えて一次情報を取得しやすい環境を提供をしていきたいです。

「仮説」そして「行動」のサイクルが、自分なりの道を切り拓く一歩になる

━━将来の選択に迷う大学生も多いと思いますが、何かアドバイスはありますか?

どの道に進むべきなのかと悩む人は多いと思います。私自身もまだロールモデルを見つけられておらずキャリアを模索中ですが、伝えたいことが2つあります。

1つ目は、分からないことだらけの中でも、自分なりの仮説を持つということです。これまでの経験や情報から「この選択肢なら上手くいくかもしれない」という仮説を立てられると思うのですが、その仮説が本当に合っているのかを検証するためには行動が必要です。私のポッドキャストも最初は「特徴的な友人や先輩を取り上げたら面白いかもしれない」という仮説から始まりました。でも、その仮説を検証する中で、「海外で働く20代にフォーカスした方がもっと面白いしニーズもあるかもいれない」という新たな仮説が浮上したんです。悩み続けるだけでは現在のコンセプトを定めることはできませんでした。60%のクオリティでもいいので検証を繰り返し、そこで得たフィードバックをもとに仮説を修正すれば次のステップに進むことができます。さらに行動のサイクルを継続することで自然とアップデートされていくはずです。

2つ目は、他人の意見や世間に流されるのではなく、自分の軸を大切にするということです。私も就職活動の際、他人からの評価やステータスを気にしてしまうことがありました。でも、それでは本当に自分が望む道を見失ったり、長期的には遠回りになることもあります。自分の価値観や興味を振り返り、自分軸で意思決定をすることができれば、次の行動に対して納得感を持ち、モチベーションを高く保つことができると思います。

ポッドキャストも「バイアスを超えた可能性を」という、明確なミッションを達成したい想いがあるからこそ続けられています。自分の価値観を大切にしながらキャリアを築いていくこと、それこそが、将来へとつながっていく道なのだと思います。

━━最後に、田岡さんの今後の展望を教えてください。

現在の活動は「私たち海外ではたらく20’s」のポッドキャストがメインプロジェクトですが、今後はそれらの音声データを活用し、様々な媒体での発信を強化していく予定です。新年からは過去の32エピソードと毎週月曜日に更新される最新エピソードの記事も同時公開するので、ポッドキャストを聞く習慣がない方にも情報が届けられたら嬉しいです。

その他にも番組から派生したコミュニティやサービスの開発にも取り組んでいます。このプロジェクトの軸は、女性だけでなく全ての個人や組織、社会の可能性を広げることですが、まずは最初の切り口として私自身が当事者意識のある「U30の女性」に焦点を当てた活動から、その輪を広げていく予定です。

BIASの活動を通じて、より多くの人に新たな可能性が広がる未来を目指していきたいです。