国内外で活躍する慶應義塾大学OG・OB(三田会)のキャリアストーリーや視点をインタビュー形式で紹介し、現役生に向けて発信する取材企画 ”focus.”
#08:吉本優太さん
2023年、慶應義塾大学商学部を卒業。在学中は体育会庭球部に所属し、選手として活動。
新卒でデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社に入社し、グローバル事業部に所属。入社1年目に学生向けグローバルアントレプレナーシップ事業を立ち上げたことをきっかけに、現在は「グローバル × 学生・若手」をテーマに、学生支援や国内外スタートアップの海外展開支援、国際イノベーションイベントの企画・運営に従事。
「30歳になったとき、自分を懸ける道を選べる自分でいたい」コンサル業界を選んだ理由

━━まず、現在のお仕事について教えてください。
デロイト トーマツ ベンチャーサポートは、世界最大級のプロフェッショナルファームであるデロイトの日本におけるメンバーファーム、デロイト トーマツ グループの一員です。
スタートアップ支援やイノベーション創出に特化したコンサルティングファームとして、これまでに5,000社以上のスタートアップを支援してきました。
事業の柱は大きく三つあります。
一つ目はスタートアップ支援。これが我々の一丁目一番地。創業期から成長後までを幅広く支援しています。
二つ目は大企業向けの新規事業・イノベーション事業支援。
三つ目は、行政・自治体に対するイノベーションに関する政策提言や行政施策の運営/実装支援です。
スタートアップ領域は成長途中の市場も多く、国や自治体が動くことで市場そのものが大きくなります。政策提言から社会実装までを担い、イノベーションに関するエコシステムを創ってきた会社だと思います。
私は現在グローバル領域に所属しており、日本企業の海外展開支援や海外企業の日本展開支援など、日本と海外の市場をつなぐ仕事を担当しています。具体的には、日本のスタートアップの海外進出戦略を一緒に伴走して考えたり、海外スタートアップの日本進出支援、大企業の海外市場戦略の初期調査など、テーマは多岐にわたります。
直近では、国同士の取り組みとして動き始めたイニシアティブの一つに携わっており、インドの優秀な理系学生を日本企業の就職市場につなぐ事業を進めています。インドには非常に優秀な学生が数多くいる一方で、アメリカでの就職環境も厳しくなっている。そうした中で、日本の安全性や文化への関心の高まり、そして日本企業側の人材ニーズも追い風となり、両国をつなぐ流れが生まれているんです。
加えて、挑戦する若者を増やすための若手支援事業にも関わっており、こちらは1年目のタイミングで立ち上げ、事業責任者も務めてきました。
基本的に海外と関わるプロジェクトが多いので、海外出張も多く、ここ3年で20回ほどアメリカ・ヨーロッパ・アジア等の様々な国に足を運んでいます。
━━そもそも、なぜコンサル業界を選んだのでしょうか。
大きな理由は二つあります。一つは、仕事に対して「テニスくらい熱中できるものを選びたい」と思っていたことです。私は大学時代まで体育会でテニスに打ち込み、今もなお続けています。人生の大部分を仕事に費やすなら、心から面白いと思えることに取り組みたい。その思いが出発点にありました。
もう一つは、就職活動の時点で自分の将来を一つに決め切るのは難しいと感じていたことです。だからこそ、まずは社会に出て5~6年の間、ビジネス人材として成長しながら幅広く事業に関わり、その上でだんだんと自分の道を見つけていきたいと考えていました。
そう考えた時、幅広い業界やテーマに深く入り込んで支援するコンサルティングという領域に惹かれました。
留学先で気づいた、日本の強さ。世界で日本のプレゼンスを高める仕事がしたい

━━コンサルファームの中でも、現在の環境を選んだ決め手は何でしたか。
留学経験が非常に大きかったです。2021年にイギリスへ3か月、その後アメリカ・ミシガン州にある大学に1年半留学をしました。
現地で自分が日本人だと伝えると、文化や食、礼儀、製造業、そしてアニメやゲームなど、本当に様々な文脈で100人100通りのポジティブな反応が返ってきたんです。
ちょうど当時はコロナ禍で、日本にいると「失われた30年」のような言葉とともに、「日本はもう厳しいのではないか」と感じるニュースに触れる機会も多くありました。しかし、海外に出てみると、日本にはまだまだ強みがあり、世界の中で存在感を発揮できる余地があると実感しました。そこから、「日本のプレゼンスを上げられるような仕事がしたい」「日本の人が日本出身であることを世界で誇れる社会にしたい」という思いが明確になっていきました。
広く業界を見られること、そして日本と海外をつなぎ、日本の存在感を高める未来に関われること。その二つが重なった先に、デロイト トーマツ ベンチャーサポートという環境がありました。
━━実際に働き始めてみて、どんな手応えがありますか。
私は20代を「修行の時期」だと捉えています。”成長 = 量 × 質” としたときに、若いうちは質の担保が難しいのでとにかく量がものを言うと考えており、何でもやることが大事だと思っています。
ビジネスには決まった正解がないので、すべてが新しい挑戦です。だからこそ、できることは全部やる、という姿勢で働いてきました。
実際、年次が上がるごとに任される案件の色は変わっていきますし、業務の幅も広がります。海外メンバーが多く在籍する環境であることも、自分にとっては大きな魅力です。その中で、手を挙げればチャンスをもらえる環境があるのはとても大きい。会社としても年齢や肩書きに関係なく挑戦の機会があり、先輩方も強くサポートしてくれる。そうした環境の中で、自分のやりたいことに近い仕事ができている実感があります。
同時に、自分の中では「偶然を待つ」のではなく、「自分で取りに行く」感覚を大切にしてきました。少しでも面白そうだ、何か意味がありそうだと感じたら、まずは動いてみる。留学中に学生団体を立ち上げたことも、仕事の外でテニスコミュニティを立ち上げたり大会を開催したことも、そうした感覚の延長線上にあります。将来の結果をすべて見通せなくても、行動の量そのものが次の出会いや機会を引き寄せると思っています。
若手でも案件立ち上げや、大型案件の責任者に。厳しい環境が、自分を成長させてくれた

━━若いうちから大きなチャレンジをされてきたそうですね。
振り返ると、自分でも驚くくらい早い段階から責任の大きい役割を任せてもらってきました。1年目で案件の立ち上げを先輩と一緒にさせていただいたり、3年目となる昨年には、15人のプロジェクトチームに加えて20人以上の学生が関わる、40人規模の大型プロジェクトの事業責任者を務めることになりました。会社としても大きなチャレンジだったと思います。
もちろん、最初は本当に大変でした。年末には「これはまずい、自分の能力が足りない」と痛感して、年末年始休みの1週間を使って徹底的にインプットの時間を取りました。改めて論点思考やプロジェクトマネジメントの本を集中して読み込み、自分なりに必要な知識を補う時もありました。最終的には大きな成果をチームで出すことができたと思っています。
事業責任者になると、自分の判断がそのまま意思決定になります。誰かに確認して進めるのではなく、「これで行く」と自分で決めなければならない。だからこそ、必要な情報を高い解像度で理解し、自分の中に判断軸を持つことの難しさを強く感じました。一方で、その厳しさこそが自分を本気にさせ、成長につながったとも思っています。
━━その中で、ご自身の強みだと感じるものはありますか。
後から気づいたことですが、私は人の懐に入ることや、人と人をつなぐことが比較的得意なのだと思います。年上の方とも年下の方とも自然に関係を築けることは、仕事の中でも非常に活きています。
一人でできることには限りがあり、チームで取り組むからこそ、大きな社会的インパクトを創ることができます。その意味で、自分のコミュニケーション力や、人の想いを引き出しながら熱量持って動く姿勢は、チームとして活動する今の仕事と相性が良いと感じています。
体育会庭球部での経験が、今の仕事につながっている
━━大学時代まで打ち込んできたテニスは、今の仕事にもつながっていますか。
かなりつながっていると思います。私は大学まで本気で日本一を目指す環境に身を置いてきました。実際、自分も全国決勝まで行きましたが、日本一には届かなかった。でも、その経験を通じて、高い基準に触れ続けることの大切さを学びました。
「日本一を取るには今何をすべきか」を考え続ける日々の中で、視座が引き上げられた感覚があります。自分がすぐに日本一になれなくても、日本一の選手と同じような生活や準備はできる。そう考え、毎日の積み重ねを大切にするようになりました。
特に大きかったのは、「準備が8割、いや9.9割だ」という感覚です。最大限の準備をし、自分に嘘をつかずに積み上げ続けること。その大切さは、今の仕事でもまったく同じだと感じています。
━━仕事以外でも、ご自身でコミュニティをつくっているそうですね。
スタートアップ界隈でテニスが流行ってきたこともあり、1年目の頃に会社のCOOと一緒にテニスコミュニティを立ち上げました。今では40人規模になり、毎月練習会を企画しています。
さらに、自分の「テニス」と「イノベーション」という文脈を掛け合わせて、投資家や経営者を集めたテニス大会を企画したこともありました。こうした取り組みを通じて感じるのは、礼儀を尽くすこと、能動的に人と関わること、そして小さくても場を作り続けることの強さです。
学生時代から縦のつながりに恵まれてきたことも、自分の価値観に大きく影響しています。先輩たちは自分より長く生き、その競技や仕事を長く経験してきた存在です。そうした人たちからもらう言葉や機会には大きな価値がある。だからこそ、自分自身も、後輩や若い世代にとって価値のあるコミュニティを作りたいという思いがあります。
大学時代の留学で得たのは、語学力だけではない。「ユニークな存在であること」を大事にする感覚だった

━━大学時代の留学経験から得た学びを、改めて教えてください。
留学では、語学以上に、自分の立ち位置や価値をどうつくるかを学びました。大学では体育会庭球部という分かりやすい肩書きがありましたが、留学先ではその肩書きが通用しません。ゼロから自分の価値を作り、コミュニティを築いていく必要がありました。
その中で強く感じたのが、「ユニークな存在であること」の重要性です。何者でもない状態で海外の環境に入ると、自分は何を持っていて、何を相手に示せるのかが問われます。同時に、日本人としての良さや、自分らしさの輪郭も見えてきました。
また、留学に行こうと思った背景には、日本人であることへの心理的な壁を越えたいという思いもありました。海外の人たちの輪の中に自然に入っていき、対等に会話できる状態をつくりたかった。ビジネスでは、その感覚がなければグローバルな舞台で戦えないと思ったからです。
結果として、今では「どこでも話せるし、誰とでも話せる」という感覚を持てるようになりました。もちろん、もともと非常に社交的なタイプだったわけではありません。それでも、学生のうちに環境を変えてみたことで、世界に対する心理的な距離は大きく縮まりました。
「未来を決め切らない」ことも、自分らしいキャリアのつくり方
━━今後のキャリアについては、どのように考えていますか。
今の仕事は、自分にとってとても魅力的で、非常に楽しいと感じています。一方で、ずっと同じ場所にこだわるというよりは、その時々で自分にとって最も面白い挑戦を選んでいきたいという感覚もあります。
自分の中には、いわゆる「計画的偶発性理論(Planned Happenstance)」の考え方に近い感覚があります。人生やキャリアの分岐は、結局のところ偶然の出会いや予期しない機会から生まれることが多い。だからこそ、未来をロジカルに固定し切るのではなく、何かが起こる余白を残しながら、自分から偶然を起こしにいくことが大事だと思っています。面白そうだと思ったことに手を伸ばし、意味がありそうだと感じた出会いを取りにいく。そうした行動の積み重ねが、自分のキャリアをつくっていくのではないでしょうか。
突き詰めると、私はまだ「何になるか」を完全には決めていません。ただ、人生の最後に「いい人生だった」「後悔はない」と思える状態でいたい。その感覚は昔から強くあります。そこに至る道のりはまだ分からなくても、自分が納得できる選択を積み重ねていくことが、自分にとってのキャリアなのだと思います。
そのための「今」の選び方を自分なりに言語化すると、「好きな人と、意義のあることを、適切な負荷でやること」だと思っています。魅力的なメンバーと一緒に、社会的意義のあるテーマに取り組み、しかも自分が成長できる負荷がかかっている。その状態が今はとても心地よく、同時に挑戦的でもあります。
直近では、学生領域とグローバル領域の二つを軸に、さらに自分ならではの立ち位置をつくっていきたいと考えています。一つの分野だけを極端に尖るのではなく、複数の軸を掛け合わせて独自性を出すという考え方は、自分の中でもしっくりきています。
自分の感性を信じて、面白いと思うほうへ動く

━━最後に、現役生へのメッセージをお願いします。
自分らしさを磨くことが、何より大切だと思います。きっかけは本当に何でもいい。興味や関心というのはとてもピュアなもので、だからこそ自分発信の純度100%のポジティブな気持ちを大切にしてほしいです。そこから広がる自分らしさのエッセンスを、どう作り、どう磨き上げていくか。それが何より大事だと思っています。
そして、自分らしさを磨くために必要なのは、自分の感性に敏感でいることだと思います。何に対して自分のセンサーが反応するのか、どんな時に「面白そうだ」と思うのか。その反応の仕方は人によって違うからこそ、まずは自分のセンサーを知り、それを信じられるようになることが重要です。私自身も、昔メンタルコーチから「楽しい、面白いと思えるかどうかが優太にとっての大事な指標なのではないか」と言われたことがあり、その感覚を一つの判断軸として大切にしてきました。
学生のうちは、まだ何者でもないからこそ、ノーリスクでいろいろなことに挑戦できます。やりたいと思ったことをやってみる、自分の輪郭を磨く、失敗しながらも続ける。そうした経験の積み重ねが、「自分を尖らせる」のだと思います。少しでも「ピンときた」ことがあれば、完璧な理由がなくても一度取りに行ってみる。その姿勢が、思いがけない出会いや次の選択肢につながっていくと思います。
ただ一方で、一人では何もできません。自分らしい尖りを持ちながら、チームワークも大切にする。その両立が、これからの時代にはより重要になるのではないでしょうか。
▼デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(DTVS)について
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デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(DTVS)は「挑戦する人と共に未来を拓く」をミッションに、様々なバックグラウンドやナレッジを持つプロフェッショナルがチームとなり、スタートアップ支援、新規事業創出支援、官公庁や自治体との連携によるイノベーターの育成支援を軸に、イノベーションを加速させるための事業を展開しています。
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