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『VIVANT』福澤克雄監督インタビュー「日本流のドラマ」と海外への挑戦とは?

今回は、2024年3月16日(土)開催「TEDxKeio High School -Catalyst-」 に登壇した、TBSドラマプロデューサーの福澤克雄監督(慶應義塾大学卒)にインタビューしました。

「VIVANT」「半沢直樹」など、数多くの名作ドラマを生み出してきた福澤監督の考える、”日本流のドラマと海外への挑戦”とはー。

1987 年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。

慶應義塾體育會蹴球部の一員として、1985 年全国大学ラグビーフットボール選手権大会優勝。卒業後は、富士フイルムを経て1989年にTBSテレビ入社。3B組金八先生」「砂の器」「華麗なる一族」「VIVANT」「半沢直樹」など、数々の名作を手がける。福沢諭吉の玄孫。

最初は、スターウォーズに憧れてエンタメ業界に興味を持った福澤監督。なぜ映画ではなくテレビでエンタメを作り続けているのですか?

本当は映画監督になりたかったから一度映画の撮影をやったことがあるけど、その時に色々わかってきて。テレビって立派だなと。

やっぱり観ている数が違うんですね。

映画は、一回どんなにヒットしても7~800万人しか観ないのに対して、「半沢直樹」は7000万人ぐらいで人口の半分くらいが観る。「半沢直樹シーズン2」も「VIVANT」も4000万人近くに観られていて、「VIVANT知ってますか?」って言ったら大体皆が知ってる。

それを味わっちゃうと、なかなか映画は難しいかなあと。映画は映画監督が作ればいいし、それぞれで頑張ってる人たちが作ったらいいっていう気持ちもあります。

あと僕は、慶應でラグビーしかやってなくて、授業を受けた覚えがないのよ(笑)それでもどうにかTBSに入れてくれたので、その恩もあります。TBSは、石井ふく子さんや昔のドラマ制作でのノウハウや伝統をずっと引き継ぐといういい文化があるから、それを継続していきつつも、今の若い人達のためにもテレビを大きくしていけたらいいなと思っています。

今の時代、TikTokやInstagramなど「ショート動画」と呼ばれるエンタメも流行る中で、日本のテレビとドラマの未来をどのように考えていますか?

「一瞬」のものが今の時代よく観られる、これは間違いない。新聞やテレビを見ないし、ニュースもネットでOKって言うけど、それは読売新聞、朝日新聞、TBS、NHK…色んな人たちが死に物狂いで作った情報を流すだけだから、そういう構図をとる限り、テレビは絶対なくならないと思っています。

あと報道、地方局って大切で、正月に石川県で地震があった時も、金沢にあるTBS系のテレビ局がガーッといって取材して映像流して。報道っていつ何が起こるかわかんないから、とにかくもう永遠ですよ。これが日本中、世界中で対応しているわけです。

ドラマに関しても、地上波のものの方が社会現象になりやすいし、続いていくような気がします。

日本ドラマの海外展開に関しては、どのように考えていますか?

海外展開もちょっと考えなきゃいけなくて、その点VIVANTは吹き替えを作るべきでしたね。Netflixはオリジナル作品じゃないと前面には出ないから、VIVANTがあっても「ここにあったんだ」ぐらいのレベルで。

でも、韓国ドラマもヒットするのに20年ぐらいかかってるわけだから、日本もどんどん出していくことが大切。半沢直樹もそうだけど、日本は独特ですよね。欧米人は「そんなにできるんだったら会社辞めりゃいいじゃん」って(笑)

そんなずっとやってる文化的なことを面白がってくれるかもしれない。誰かが面白いって言って、それでまた他の誰かが面白いって言ってくれて、徐々に広がればいいなと。

これからやってみたいことや作りたいドラマはありますか?

外国人目線で作る、日本ドラマです。

「常識」っていう話が結構面白いんですよ。僕の中で日本で生きてて普通だと思ってることでも、日本の常識と世界の常識とではやっぱり違うし、外の世界を見て驚くことが多いわけです。

色んな制作をする中で、何でも欧米スタイルを持って来ようとするとダメだということがだんだん分かってきたんです。全て欧米スタイルにするのは、やっぱり日本には無理があって、日本には日本式の考え方、やり方がある。

日本は侍の世界で、「自分の藩から出されたら恥」っていう考え方がアジア人には通用するけど欧米人には分からないんです。

でもそんなギャップをうまく表現して、面白いって言ってもらえるような作品を作れたらいいなと思います。

韓国など、海外のいろんなエンタメがある中で「日本流の戦い方」はありますか?

実を言うと、世間で言われてるのと全く正反対で、僕は海外にウケないものを作った方がいいと思っています。VIVANTでも、「忍者とかそういうものを出さなきゃウケない」とか書かれたことがあるけど、世界のスタンダードの流れに乗るといつか必ず失敗するような気がしています。日本って独特だから。

僕は島根県の観光大使をやっているんですが、結構観光客が来るんですね。それはなぜか?呼ぶために環境からいろんなことをしないで、もうこの独特の世界観そのままを見てほしいって感じでやったから、それを気に入ってだんだんみんな来てくれるようになったんです。

宗教だって、人の宗派をちゃんと尊重するし、喧嘩もしない。世界の中でもなかなか独特な国だなという感じがします。

せっかくこんなに独特な国に生まれたんだから、それを守りながら使う。色んな仕事でもそうだけど、日本の考え方を世界に合わせる必要もないし、日本独特なものを出していくべきだと思っています。

TEDxKeio High School -Catalyst-のトークで「やりたいことをやる」ことの重要性を伝えた福澤監督。大学生は将来の不安を抱えることも多いですが、何かメッセージはありますか?

僕もこれは非常にわかる。

僕も慶應時代は、お小遣いもらって、ちょっとバイトして、今から自分で稼いでいかなきゃいけない。子供も養わなきゃいけない。非常に心配だよね。

色々なことがあって、だからお金の方に走ってしまいがちだけど、お金で人生判断すると自分の才能や限界を自分で判断してしまうことになるんです。才能はいつどこで出てくるか分からないから、やっぱり「やりたいことをやる」ことが大切ですね。

一つ言えるのは、自分のやりたい方向の一流企業に入るとその道の一流と一発目からお仕事できるから、これはすごく近道だと思います。

一気に一流の料理ばかり食べると、本当に美味しいものが分かってくるっていうのがあるのと同じで、せっかく慶應にいるんだったらバーって一流企業入って、一流の人と出会ってある程度仕事をして、自信持ったらボンっと辞めちゃうとか。

初めから全然そういうの関係なく生きるのもいいし。ちょっと心配だったら、やりたい方向の一流企業を目指すと、一気に一流の考えを持った人達と出会えるからそれはいいですね。

でも結局は「やりたいことをやる」のが大切。みんな頑張ってほしいと思います。

TEDxKeio High School

TEDxKeio High Schoolは、慶應義塾高等学校をはじめとした慶應義塾の一貫教育生徒有志により企画・運営されるTEDxイベント。

慶應義塾の塾員・塾生が半学半教の場を作り出す『正統さ』と、有志生徒が独自にイベントを主催する『異端さ』の二つの側面を兼ね備えていることから、慶應義塾高校の「協育プログラム」に認定。

今回の-Catalyst-は5回目の開催で、昨夏甲子園優勝を果たした野球部・森林貴彦監督やアパレルブランド「CLOUDY」代表の銅冶勇人さんなど、計9名が登壇し、100名近くの慶應義塾一貫教育生徒が参加した。

▼「TEDxKeio High School -Catalyst-」公式サイト
https://sites.google.com/view/tedxkeiohighschool