Forbesの30 Under 30 JAPAN に選ばれた慶應生微生物研究者

今回は、Forbesの30 Under 30 JAPAN に選ばれた、慶應義塾大学 環境情報学部 4年 で GoSWAB 代表の 伊藤 光平 さんにインタビューをさせて頂きました。
高校の頃に微生物の研究を始められ、大学入学後には学生だけのプロジェクトGoSWABを立ち上げて微生物の研究に取り組んでいるそうです。
GoSWABや今までの成果・活動に加え、東京オリンピックの微生物コミュニティへの影響の解明など、今後の目標についても語って頂きました。
 
──「世界を変える30歳未満の30人の若者たち」である30 UNDER 30JAPAN への選出おめでとうございます。今回この賞を受賞した「GoSWAB」プロジェクトについて教えていただけますか?
日本の都市環境における微生物コミュニティや病原因子、ヒトの人種の分布などはこれまでの研究では明らかにされていませんでした。
僕たちGoSWABでは、都市部の建築物の表面やエスカレーターなど、人の往来が激しく微生物が多く存在していそうなところを綿棒で採取し、どのような生物がいるか、その生物がどんな機能を持っているかを調べています。
都市環境において謎に包まれている微生物コミュニティを明らかにすること、それが僕たちのミッションです。
と言うと少し難しい感じもするのですが、もっとイメージしやすく言うと、「現在発見されている微生物は、実際に存在する微生物の1%以下ではないか」と言われているんですね。
その1%の微生物でさえ、人間に多くの影響を与えていることがわかっています。
だから残りの99%の微生物を研究して人間に与える影響を解明していき、今後の僕たちがより健康に、より豊かに暮らせるよう、微生物の観点から貢献したいと研究を進めているんです。

 
──どうして研究を始めようと思ったんですか?
僕は山形県鶴岡市というところに高校生まで住んでいたんですけど、高校1年のとき、学校で慶應義塾大学先端生命科学研究所(以下、先端研)の特別研究生が募集されたんです。
小さい頃から「なんでもいいから人と違うことがしたい」と思っていた僕は、戸惑うことなく申し込みました。
僕が先端研で研究したのは皮膚に住む微生物でした。簡単にいうと、「アトピーに海水をつけると治癒できるのかどうか」という研究です。
当時の博士課程の学生が指導に入ってくれ、二人三脚で研究を進めていきました。

高校3年次:鶴岡メタボロームキャンパスで行われた、高校生バイオサミットで環境大臣賞を受賞

 
研究を進めていくうちに、人の体の中にいる微生物の研究ってやりつくされているな、と思ったんです。
「人と違うことをやりたい」「まだ誰もやっていないことがやりたい」という考えが強かった僕は、違う分野の研究に目を向けました。
そしてちょうどその頃、コーネル大学医学部のクリス・メイソンが行った「地下鉄の微生物解析」のことを知ったんです。
今まで人の体内のものしか注目されていなかった微生物の研究が、この研究を皮切りに都市の微生物にまで広がっていました。
だから世界的に見て新しい取り組みであり、「まだ誰もやっていない研究」に僕は非常に魅力を感じ、思い切って足を踏み入れました・
 
──研究を進める上でこだわりのポイントはありますか?
高校の時から、できるだけ学会など公の場には出るようにしています。
研究をやっていると中に籠りがちになるんです。でも、研究と同じくらい発信することは大事だと思っています。
研究者や一般の人を含めた多くの人に研究を知ってもらうことで、ディスカッションがおきて研究が加速しますし、今の時代においてサイエンスは研究者だけのものではなく、誰もが参加して良いものだと思っています。
発信に重きを置いている理由は他にもあって…。
僕、本当はそこまで研究に向いていないんです(笑)
研究を進める中で会った人の中には「センスあるな」と思う人がたくさんいたのですが、僕はそうではなくて…。
だから、発信とか、研究以外のことにも積極的に取り組んでいかないと埋もれてしまうような危機感があって…(笑)
ただ、研究は本当に好きだし、今まで辞めたいと思ったことは一度もありません。

 
──研究が進むと、将来どういうことが可能になるのでしょうか?
僕たちは「都市を媒介して、人と微生物がどう関わり合っているのかを探りたい」と考えています。
都市の微生物コミュニティを解明することで、公共交通機関や公衆衛生の対策、感染症の防止を実現したいです。
究極的には都市デザインにも応用できるのではないかと考えています。
例えば、悪い微生物が付着しづらい材質の建造物をつくったり、空気中の微生物に着目して空気の流れを変えたりできれば良いと思っています。
 
──これからの目標は?
1つは、オリンピックが日本の微生物コミュニティにどのような影響を与えるのかを解明することです。
2020年に東京オリンピックが開催されますよね。
予想される訪日外国人は4,000万人ともいわれています。多くの外国の方が日本の複雑な公共交通機関を使って移動するわけですが、彼らが肌や服につけて日本に持ってくる病原菌などはどのように対策されるのでしょうか。
僕たちは、オリンピック時の外国人の流入における微生物や薬剤耐性遺伝子などが日本にもたらす影響を調査したいと思っています。
日本の微生物コミュニティが、オリンピック前後で大きく変わる可能性も示唆されます。
そんな「微生物学的なインパクト」を明らかにできたら面白いんじゃないかなと考えています。
 
もう1つは、もっとたくさんの人にGoSWABの活動、そして微生物の素晴らしさを知ってもらうことです。
細菌とか微生物と聞くと「汚いもの」と認識する人もいるのですが、ヨーグルトのようにヒトの腸内に入って健康を維持してくれるような微生物もたくさんいるんです。
人が生きていくためには微生物の存在がかかせない。
だからGoSWABでは、都市環境における微生物コミュニティを解明し、よりよい環境づくりに貢献したいと思って活動しています。
でも、実際に都市でサンプリングをしているとひややかな目で見られることも多くて…(笑)
「微生物って自分たちの生活に必要なんだ」という認識を多くの人にもってもらい、微生物を殺すのではなく「微生物とともに生きる」という考えが広まればと思っています。

──最後に、慶應生に一言お願いします!
みんなそれぞれ、向いたものがあると僕は思います。
僕にとって、それはサイエンスではありませんでした。ただ、僕はサイエンスが好きでここまでやってきました。
慶應生のみなさん、自分に何が合うかではなく、自分が何を選ぶかを大切にしてください!