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慶應生が知っておきたい、資格試験の違いや特徴について(司法書士・行政書士編)

本連載も第3回となりました、今回はあまり耳慣れないのではないかと思う「司法書士」と「行政書士」の違いについてみていきます。
どちらも「書士」とあるように法律に沿った書類を作成することが主な仕事ですが、実は作成した書類の提出先が異なったり、勿論司法書士にしか出来ない仕事、行政書士にしか出来ない仕事があります。
以下で個別に詳しく見ていきましょう!

司法書士とは?

司法書士とは?

司法書士の仕事は主に書類作成ですが、登記や簡裁訴訟に関する書類作成なので、主な書類の提出先は法務局や裁判所になります。
また、法律上の手続きの代行も行います。
つまり、司法書士の仕事は大きく分けて2つあり、「書類作成」「簡易裁判所の代理・裁判事務」です。
以下仕事内容についてより具体的に見ていきましょう。
まず、「書類作成」について見ていきましょう。
書類作成においてもっとも重要な業務は「登記」です。
「登記」は司法書士の独占業務であり、不動産登記や商業登記などが挙げられます。
例えば、土地や建物は不動産登記をしてはじめて所有者が法的に確定するので、重要な業務だと言えるでしょう。
また、書類作成という面では訴状などの複雑な法的書類の作成も作成書類の1つです。
続いて、「簡易裁判所の代理・裁判事務」について見ていきましょう。
簡易裁判所の代理・裁判事務とは簡単に言うと、簡易裁判所では弁護士と同等の業務を行うということです。
認定司法書士という資格を持っていれば、簡易裁判所の事件(訴訟額が140万円以下)については弁護士と同じ活動をすることが認められています。
一時期CMで話題になった消費者金融等に対する過払い金返還請求には、この制度を利用した多くの司法書士事務所が参入しています。
参考 司法書士についての詳細資格スクエア

試験について

司法書士になるためには国家試験である「司法書士試験」に合格する必要がありますが、この試験は特に受験資格がないため誰でも受験することができます。
(国籍も関係なし!)つまり、何度でも受験することができるということです。
しかし、司法書士試験は司法試験に次ぐ難易度である上に合格者を少なく絞る方針のために合格率は「3%台」を推移しており、かなり狭き門であることが言えるでしょう。
司法書士試験は「筆記試験」(例年7月の第1または第2日曜日)と「口述試験」(10月中旬)の2種類があります。
まず、筆記試験は午前の部と午後の部に分かれており
午前の部はマークシートの択一式、午後の部はマークシートの択一式と記述式(登記申請書の記載事項について、論文式ではない)になっています。
午前の部の科目は

  • 憲法
  • 民法
  • 刑法
  • 商法
の4科目。
午後の部のマークシートでの科目は
  • 不動産登記法
  • 商業登記法
  • 民事訴訟法
  • 民事執行法
  • 民事保全法
  • 供託法
  • 司法書士法
の7科目。
記述式は
  • 不動産登記法
  • 商業登記法
の2科目(1問ずつ)。
午前のマークシート方式、午後のマークシート方式・記述式で
①それぞれ基準点(午前の部:75/105点、午後の部:72/105点)を満たす
かつ
②総合点で合格点超える
ことで合格となります。
次に、筆記試験に合格すると口述試験があるのですが、口述試験で不合格になる人は殆どいないのでそれほど身構える必要は無いでしょう。
しかし、試験に合格しただけでは業務を行うことは出来ません。
その後司法書士会のいずれかに登録をすることと、司法書士会による研修の受講が必要です。
参考 試験の傾向と対策資格スクエア

行政書士とは?

行政書士とは?

行政書士の仕事も司法書士と同じく主に書類作成になります。
しかし、行政書士は司法書士と違い、(代行)作成した書類の提出先は官公署になります。
例えば、会社設立に関する書類の作成契約書の作成などが行政書士の仕事に当たります。

試験について

行政書士になるには、行政書士の資格が必要となります。
行政書士の資格は

  • 国家資格試験である「行政書士試験」に合格する
  • 弁護士・弁理士・税理士・公認会計士のいずれかの資格を取得する
  • 公務員として行政事務の経験を20年以上積む(高校卒業者は17年)
以上の3つの内のいずれかを満たすと取得することが出来ます。
しかし、②で挙げた資格はいずれも厳しいものであり、③を満たすには非常に長い年月を要するため、①の「行政書士試験」に合格することが王道といえるでしょう。
「行政書士試験」も司法書士試験と同じく受験資格はないため誰でも受験することができます。
一般的に行政書士試験は司法書士試験よりも難易度が低いと言われていますが、その合格率は「約10%前後」で推移しています。
この数字には受験者に社会人が含まれるためと言われてはいるものの決して易しい試験ではないでしょう。
実は、行政書士の資格がなくても行政書士の補助者として業務に携わることは可能なので、補助者として働きながら行政書士の勉強をする、という方も少なくないようです。
さて、「行政書士試験」は毎年11月、年一回開催される筆記試験になります。
出題形式は
「行政書士の業務に関し必要な法令等」に関する択一式及び記述式(40字程度)—46題
科目は
  • 憲法
  • 行政法
  • 民法
  • 商法
  • 基礎法学
の5科目。
「行政書士の業務に関連する一般知識等」に関する択一式—14題
(政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解について)
となっています。
  • 「行政書士の業務に関し必要な法令等」の正答率が50%以上
  • 「行政書士の業務に関連する一般知識等」の正答率が40%以上
  • 試験全体の正答率が60%以上
全て満たすことで合格となります。
その後、行政書士会に登録・入会することが必要です。
参考 傾向と対策資格スクエア

司法書士と行政書士の違いとは?

上記で述べたように司法書士と行政書士は書類を作成するという点では共通していますが、細かい部分で異なってくることが理解できたでしょうか?
まとめると以下のようになります。

①業務の違い
司法書士は「法務局や裁判所」に提出する書類の作成と
「簡易裁判所の代理・裁判事務」
行政書士は「官公署」に提出する書類の作成
②試験の違い
司法書士は「筆記試験」と「口述試験」
行政書士は「筆記試験」のみ
まとめをみても分かるように司法書士と行政書士は重複する業務がありません。
つまり、行政書士でないと出来ない業務が含まれる依頼の場合には司法書士であってもその部分は行政書士に依頼しなくてはならないということです。
(勿論逆も然り)そのため、司法書士試験は行政書士試験よりも難易度が高いため、司法書士の中には行政書士の資格も持っているという人が多くいます。
さて、次回はどちらも不動産を扱っている不動産鑑定士と宅建士について見ていきます!?

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